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読書量を増やせば収入が上がるのか問題

 「読書量増やせば収入が上がる!?」みたいなタイトルの記事を読書ブログや雑誌で大量に見かける。(試しにGoogleで「読書」「収入」で検索して見てください。)

 読書ブログってこのテーマにふれなきゃならないのだろうか?

本当に上がんの?

 「読書」と「収入」の関係をテーマとした記事の大半は「読書量を増やせば収入が上がる!」という論調となっている。

 ほんまかいなって思いません?ちょっと検証してみよう。

 多くのブログで根拠としているデータは、だいたい共通していて(そもそも大半が、元の記事を適当にコピペしたようなものなので)以下の2つの記事を根拠としているようだ。

 記事①

年収と読書量には相関関係がある!?

数年前になりますが、PRESIDENTという雑誌が年収ランクと読書量の関連性に関するデータを発表していました。
ごく限られた対象者にアンケートした結果のようですが、それによると、年収500万円から800万円クラスの人は、一日当たり平均5~30分間の読書をしており、1500万円以上の人は毎日平均30分以上の読書をしているそうです。
また別の調査ですが、20歳から30歳代のビジネスマンは、年に平均3冊しか本を読みませんが、30歳代で年収が3000万円を超えている人の平均読書量は、1ヶ月で3冊だそうです。
年平均3冊と比較すると、12倍の読書量となるわけです。

(引用:1冊の読書で年収75万円の差がついている!?

記事②

世帯年収が高いほど読書量は多い傾向
1 カ月間に読む本の平均冊数と、世帯年収の関係をみたところ、1 カ月に最低 3 冊以上本を読む
のは、世帯年収が「1500 万以上」の人が最も多く 40.5%、最も少ないのは「300~500 万未満」の人で 22.6%という結果となりました。
 また、「0 冊」と、1 カ月に 1冊も本を読まないと回答した人が一番少ないのは世帯年収が「1500 万以上」の人で 9.5%、「0 冊」と回答したのが一番多かったのは「300~500 万未満」の人で 28.8%となり大きく差が出ました。世帯年収が高いほど読書量が多い傾向があるということがうかがえます。(引用:『現代人の読書実態調査』財団法人 出版文化産業振興財団 2009 年 10 月 19 日)

  上記記事①、記事②では、確かに「世帯年収が高いほど読書量は多い傾向」にあるし、「年収と読書量には相関関係がある」と言える。

 相関関係はあるけど因果関係があるとまで言える?

 多くの記事では、このデータを根拠に「読書量を増やせば収入が上がる!」という方向に持っていく。つまり読書量UP→収入UPという因果関係があるみたいな話にしれっと持っていく。※①

 「読書量が多いほど収入が高い傾向にある」と「読書量が増えれば収入が上がる」とは、似ているようで全く別の意味だ。前者は相関関係の説明だけど、後者は更に突っ込んで因果関係を見出した表現だからだ。

 でも、記事①と記事②だけでは、読書量UP→収入UPという因果関係があるとまでは言えない。だって逆かもしれないでしょ?つまり、年収が高いから本がいっぱい買えて、それで読書量が多いのかもしれない。

 記事①と記事②に示された相関関係から予想されるのは以下の4つだ。

 ①読書量UP→収入UP
 ②収入UP→読書量UP
 ③関係ない、ただの偶然
 ④何か他の要因→読書量UP and収入UP

 多くの記事では、他の3つの可能性を検討せず、①番のみに着目している。

 でも、僕は④番が正解なんじゃないかと思っている。

 アイスクリームが売れれば溺死が増える?

  上記④番みたいな関係を疑似相関という。

 こんな話を聞いたことない?ある街では、アイスクリームの売り上げが最も高い時期には、プールでの溺死事故も最も多い。では、アイスクリームの売り上げ増が溺死増の原因(あるいは結果)なのだろうか?もちろん違う。実際には、猛暑が両方の原因でしょう。つまり、暑ければ、アイスが売れるし、泳ぎに行く人も増える。で溺れる人も増えるというわけだ。

 では、読書量と収入との関係において、何が「猛暑」に相当するのだろうか?

 収入格差は知能格差

 そもそも収入が上がる要因はいろいろある。例えば、年齢、家柄、健康状態、学歴、知能だ。どれも説得力がありそうだ。

 僕は、この中でも特に「知能」なんじゃないかと思っている。

 つまり、元々知能が高い(頭がいい)やつが収入高くて本も読む傾向にあるって話だと思う。

 知能と収入との相関関係は非常に強い。『階級「断絶」社会アメリカ』(チャールズ・マレー)では、収入格差は知能格差であることを示している。

 すなわち、頭が良ければ収入が上がる可能性が高いことを示している。

 また、頭が良ければ、読書量が増える可能性が高いという点も(データはないけど)納得しやすいのではないだろうか。

 もちろん、実は、読書量UP→収入UPが正しいのかもしれない。

 僕もそうだといいなと思うし、収入はともかく読書はメリットだらけだと思う。読書をすれば、いくらか能力は上がるだろうし、それで収入が増えるという理屈も筋が通っていると思う。

 でも、先に挙げた雑誌やブログは、明らかに根拠が足りないことをわかってながら「読書量UP→収入UP」って思わせるように書いてる。読書を勧めることはいいけれど、そいういう姿勢は不誠実のように思ってしまう。

 また、現状、収入面でうまくいっていない人が読書だけにすがるようなことも良くないと僕は思う。

 結局、目の前の仕事をがんばれば収入が上がるんでしょう。

おまけ:ちょっと何言ってるかわかんない

 上記記事①は、その後以下の文章が続く。

 仮に、年3冊の本を読むAさんが、年収500万円だとして、毎月3冊の本を読むBさんが年収3000万円だとしましょう。
Bさんは年に36冊の本を読むので、Aさんとの差は33冊。
この数字で年収の差額2500万円を割ってみると、1冊あたり75万円以上になります。
極端に単純に言えば、年に読む本を1冊増やすたびに、あなたの年収が75万円アップするかもしれない!ということですね。

(引用:1冊の読書で年収75万円の差がついている!?

 極端に単純以前に、何で「年収の差額を冊数で割ってみる」のかさっぱりわからないけど、こんな理屈アリ?

 この理屈でいうと年に読む本を1冊増やすたびに年収アップの割合が減ることになるのでは?

 

  ※①:微妙に因果関係があると言い切る表現を避けたいからか、「読書量増やして収入を上げる」と言わずに、あくまで「読書と年収を比例させる」という表現を使っているブログもある。でも、ブログ全体の論調からし「読書量増やして収入を上げる」という意味じゃないと理屈が通らない。だいたい、「読書と年収を比例させる」ってどういう意味?「年収が低いから読書量も減らす」ことも「読書量が少ないから年収を下げる」ことも「読書と年収を比例させる」に含まれるんだけど。そういう意図がないなら、いっそ言い切った方が良くない?